dobochon’s diary

宮原清の夢日記

2007-01-01から1年間の記事一覧

「発掘」

工房の裏手の造成地で「すごいものが出た」と学者達が大騒ぎしている。 この辺りの土地は登記上は準工業地帯なのだが、お構いなしの宅地化が進み、ここ数年やたらとほじくり返されていた。さらに地形的には古い扇状地の下手にあるため、掘ればいろんなものが…

「赤目パイパイ」

忍者である私は 屋敷の随分上まで上ってきたはずだ。 部屋の壁は何の素材でできているのだろう、 鮮やかなブルーを貴重とした緩やかな曲面で仕上げられていて、 床にはふかふかとした水色の絨毯が敷かれている。 部屋と部屋・上階と下階の境界が曖昧な構造に…

「あしたのエー坊」

エー坊は思う。 自らを痛めつけることなく、自己を相対化することなんて出来るのだろうか。 体内にいろんなタイプの「毒」を入れることで、生を実感する。 そもそも、身体は毒素を自己生成する事すらあるらしい。 タトゥーは、外界と自分の境界を輪郭化して…

「なぜかエー坊」

器具をはめたまま眠ってしまったエー坊。 どのくらい時間が経ったのだろう、 閉じた瞼の向こうで、まばゆい光が舞うのを感じる。 目覚めの一歩手前の世界で、その光の明滅は明らかにメッセージだと思った。 止まっていた血流がどっと動きだし、エー坊は目を…

「そしてエー坊」

どこにしまったのか、どうしても思い出せないものがある。 一日中、家捜しをしたが見つからない。 もうこうなったら身体に聞くしかなさそうだ。 エー坊は今日も装置に身を委ねた。 締め付けられるこめかみの奥から 記憶をひっぱり出すのだ。

「本日のエー坊」

アイルランドの民。 海沿いの農地には土が無く、岩ばかりだ。 彼らはその岩を使って、潮風から畑を守るための石垣を築く。 その上に海から運んだ海草を乗せ、雨にさらして塩分を抜く。 石垣で囲まれたわずかな土地にそれを敷き詰め、 長い時間をかけて海草が…

「今日のエー坊」

海老蔵の目つきに触発され、 左右の黒目をそれぞれ上と下に動かす事ができないものかと考えたエー坊。 早速、眼球運動養成ギプスの作成にとりかかった。 あの「こめかみ締め上げ器」がこんなところで役に立つとは。 眼前に固定された小さなモニター上で、 最…

「青い谷」

教授の案内で古い地層の谷へ行った。 六角形の岩から成る連なりは、 古くには遠く大陸まで続いていたという。 その崖線に添うように細い歩道を降りていった。 1時間ほどかけて崖を下りきると、 青い堆積層が工芸品のような縞模様を見せている緩やかな谷底に…

「冷凍犬」

冷凍された犬が送られてきた。 だいぶ前に注文していたのがやっと届いたのだ。 木箱を開けると、大きな氷の固まりの中に黒い犬。 湯船してしばらく待てば、解凍されるはずだ。 溶けたら、まず散歩に連れて行ってやろうと思う。

「エー坊・その後」

エー坊は心を痛めていた。 「肉体に痛みを感じない男」として売り出そうとしたのだが、 テレビ局での大失態でその夢もあっけなく終わってしまった。 一人きりで、部屋の窓から外を眺める毎日。 そしていつものように結露した曇りガラスに指を這わせていたエ…

「水無川」

雨の雑木林は、すっかり日が落ちて、乗算の深いラベンダー色。 傘の柄を、古い水道の蛇口で作ったら面白かろう、などとぼんやり考えながら濡れた落ち葉を踏みしめていたら、クマ笹の茂みが途切れたあたりで、にわかに広大な川の流れを思わせる水音が聞こえて…

「レジの女」

そのスーパーの女と余市は、ただならぬ関係だった。 始まりはこうだ。 余市は、今のアパートに引っ越してから日曜ごとに近辺の商店街をあちこち回って店の品定めをしていたが、ある時ふらっと入った隣町の小さなスーパーで、たまたま並んだレジを担当してい…

「犬くぎ」

吊り広告のまずいレイアウトを、 焦点の合わない目で見るともなしに眺めている余市の興味は、 実は足元から伝わってくる振動にあった。 余市を乗せて高速で移動する車両を支える、ごつい車輪。 その下でなまめかしく光るレール。 そのレールを献身的に背負う…

「湿度」

余市の興味は「湿気」である。 湿気の実体とは、どんな形をしていて、その密度は果たして捕まえることのできるボリュームなのか。 余市は、風呂場の中で大量の湯気を産む為に失神寸前になるまで湯船に居座り、 その蒸気を部屋に解放するのが好きだった。 フ…

「チャンネル」

進行方向の空には嘘のようにドス黒い雲が立ち込めている。 正確にはドス茶色だ。黄砂をたっぷりと含んでいるのだ。 その下はきっと、どろどろとした雷雨。 ああ、今から あすこの真下に突っ込んでいかなきゃならんのかと思うと ワクワクしてきた。

「リニューアル」

出勤したら、事務所のレイアウトが変わっている。 窓向きなのが気に入っていた俺のデスクは部屋の中央に移動され、 元の場所には白いソファーと大きな趣味の悪い柄のクッションが置かれていた。 パソコンもモニターも見知らぬものに入れ替わっていた。 呆然…

「郵便受け」

ステンレスで郵便受けを作った。 兼ねてから方形の郵便受けに不満を感じていたので、 この際、納得のいく柔らかい形にしてやろうと思い、 知り合いがやっている板金工場に押し掛けていって自分で作ったのだ。 巻貝状にラウンドさせた曲面にヘアラインの輝き…

「ひらめき」

新しいオフロードバイクを開発したとして、 それに与える最高の名前を思いついたので発表したい。 ズバリその名も「ヤマちゃん」 しかし私は免許を持っていない。

「耳なし」

斜面を滑る男の身体は 文字で埋め尽くされている。 雪上の耳なし芳一たちは、 何から身を守らなければならないのか?

「パープル・ブラザーズ」

二人の坊さんによる読経は次第に熱を帯びてきた。 濃い紫の袈裟を着た方の坊さんは目をつぶり一心不乱にうなり声をあげている。その斜め後ろで薄紫の坊さんがお経をめくりつつ木魚でリズムを刻み、全体の流れに強弱を付けてメインボーカルの暴走をコントロー…

「歌舞伎役者」

昨日は歌舞伎役者の家筋の友人、史介の家に泊めてもらった。 史介は、ちゃらんぽらんの限りを尽くしているような奴で、歌舞伎とは全く縁のない広告関係の仕事をしている。私はその仕事繋がりでよく史介と飲むのだが、昨日はつい終電の時間を過ぎてしまい、彼…

「内ポケット」

いつの間にか、無かったはずの内ポケットがたくさんあって便利だなと思っていたら実は上着を裏返しに着ているだけだったと気付いた時にはすでに鷺宮を過ぎていた。 果たしてこれは荒ぶれたファッションとして成立しているのか、単なるヘロヘロの酔いどれとし…

「落下エネルギー」

この時間帯の恵比寿駅のトイレは大盛況だ。 行と列の最前線は黒部ダムの放水というか、ナイアガラ瀑布というか、そんな迫力で、今日飲んだビール分の毒素を「一気に清算」といった感の意気込みが男達の後ろ姿から伝わってくる。 かくいう私も、滝壺への恍惚…

「あさめし」

目覚めた瞬間から、 白いごはんとみそ汁と決めていた。 ところがでてきたのが グワバとピザ。

「指令」

西武新宿線の車窓から撮影されたらしいVTRを見せられる。 ただし、空と建物の屋根の境界だけが、コントラストを強調されて延々と流れている映像。 「明日までに、これを見て地図上でどの辺りを走っているのか瞬時に答えられるようにしろ」 男は、そう冷たく…

「お品書き」

早めに現場が終わったので、ふらふらと路地奥の赤提灯に入った。 カウンターに座り、二つ折りの品書きを手に取った。 厚揚げや煮込みといった冴えないメニューが並んでいるが、それに続いて店の年間売り上げが載っている。 更に、材料の仕入れ代と人件費、家…

「日本地図」

知人の個展のオープニングで訪れた画廊で 廊下に灰皿が置いてあったのを思い出し、部屋を出ると 隣が針灸院だった。 その入口脇の壁面に大きな日本地図が貼られている。 よく考えれば、その場所に何の必然性のない日本地図だが 見事にその空間にしっくりと調…

「登山鉄道」

かつて何度となく訪れた、高地の湿原。 この週末、久方ぶりにそこへ行ってみようと思った。 麓の町に着いた時には、既に日が傾きかけていた。 そこから登山鉄道に乗って湿原の入り口へと向かう。 既にじっとりと濡れた空気の中、列車は歯ぎしりをしながらス…

「無能山」

無能山は、もともと風邪の谷の住人で、ふだんは滅多に姿を見せない。だが、この街で事件が起きたために、こうして現場の煉瓦造りの洋館にに呼び出された。近隣で何か不可思議な事件が起こるたびに無能山は呼び出されるが、それは、容疑者としてではなかった…

「足の指の研究ー3」

サルの足の親指は、うんと内側についていて、あたかも人間の手の親指のように機能するが、人間の足指の機能はそこから時間をかけて今のような役割へと次第に変化した。すなわち「物を掴む要としての役目」から「冬に布団の中で靴下を脱ぐ役目」へと。 その過…