2020-01-01から1年間の記事一覧
車の修理が終わり、書類にサインを求められた。 「所有者の心の状態」というチェック項目に・象一匹に対してピストルの弾一発程度のダメージ・待ち時間に出したオヤツの味にメロメロと書いてあった。 .
ひさしぶりに昔の友人に会ったら笑顔の口の中に鋭いキバが見えた。
自分はある組織の一員で、いま粛清を受けている。全身に石膏を塗られて垂木とスタッフで適当に固められ、近所の公園に連れて行かれた。これからゴムで遠くへ飛ばされるのだ。 .
兄弟の楽器部屋 その兄弟の演奏する楽器の数々は、とにかく独特だった。自転車ほどの大きさの管楽器や、螺旋状の鍵盤楽器、まるで彫刻作品のような打楽器など。今日のステージでは床下に置かれた船のサイズの弦楽器を使うつもりらしいが長いこと使われていな…
自分はリハビリに来た投手だ。まずはゴムボールを投げることから始めよう。 意外にも遠くへ投げることができてゴムボールは柵を越えて小川に落ちた。 取りに行くと小鳥が水浴びをしていた。 .
集まる牛乳の数は人気のバロメーターなんですよ、 と教師は言った。 .
磁力_Magnetic force 足裏に強力な磁石を仕込むアイデアに捉えられて一晩。明け方になって浮くことはできないという結論に。
ここに住み始めた頃、周りは堂々とした雑木林で覆われていた。夏、樹下は静謐ながら秘密めいた妖しく濃密な香りに満ちていたし、冬枯れの枝越しに見える青空には、何かを見透かされているような透明感があって、そこには近づきがたい威厳のようなものを感じ…
クイズの答えは「思春期塗装社会啓蒙大全」だと解っていたが、フリップに書く漢字がどうしても出てこない。 .
「金星はどれ?」と、彼女は言った。自分は、握った手の温もりが気になって、それどころではなかった。「あれはドローンだよ」と答えた。
早く戻らないと、日が暮れてしまう。しかし今、乗っているのは雑巾だ。踏切でレールのミゾを越す度に形が崩れるので、思ったように進まない。
不味いが美味い。
建物の住人たちが、老朽化してしまったところを補修している。 ひび割れたり、剥がれ落ちたりしている壁に 漆喰をコテで塗り足す作業。 柱と壁の間にできてしまった隙間を埋めるのは何とかなるだろうが 垂直の壁から天井のヴォールトにかけては、 オーバーハ…
次に目を覚ますとそこは茶畑の中の一本道に敷かれた布団の中で顔の上には乾いた青空が広がっていた。 自分は、優しかった宿の主人にも捨てられたのだと悟った。
古い宿の布団部屋。延々と取り調べが続いたせいで、自分はすっかり参ってしまい、ついに寝てしまった。 フトンの中で目を覚ますと、枕元の机の上に、2枚の名刺が置いてありそれぞれの裏面にメモ書きが添えられていた。 1枚は取り調べ官のもので、寝てしま…
車窓から、ちらりと見えたのだ。巨大な石像が4体。山間の集落を埋め尽くす白い女人像。そのひっつめ髪に焦点をあわあせようとした途端、汽車はトンネルに入ってしまった。
瞳のサラダ。 彼のための、特別な一皿。
その家はマスキング・テープで組み立てられていた。
お客からの達ての要望で、生け花に生ガキを入れたら見る見るうちに花が枯れていった。会場の仕事仲間たちは、「そんことも知らないのか」というあきれ顔で黙々と自分の仕事をこなしていた。間もなく夜が明けて、展示会は始まってしまう。
そこは古いホテルであり中学校である。その一室にあるナイトクラブ。歌い手と気が合うことは直感で分かった。
風船を手渡すと女たちはプロペラのついたバーにつかまり浮き上がって会場をゆっくりと回り始めた。
テーマパークを出るとそこは一面の田んぼだった。しばらく歩いていると、鉄道のものらしい橋が見えてきたのでそれをたどって駅を探すことにしたが、いつまでも経っても駅には着かなかった。日が傾きはじめて、のっぺらとしたグレーになった広い空に巨大なク…
テーマパークを出るとそこは一面の田んぼだった。しばらく歩いていると、鉄道のものらしい橋が見えてきたのでそれをたどって駅を探すことにしたのだが、いつまでも経っても駅には着かなかった。日が傾きはじめて、のっぺらなグレーになった広い空に巨大なク…