dobochon’s diary

宮原清の夢日記

2006-01-01から1年間の記事一覧

「二匹の虎」

若い虎達はよくなついている。 が、危険が一杯だ。 今は無邪気にじゃれついて、 私の顔に暖かい額をぐりぐりと押しつけて遊んでいるが 手元の肉をめぐって二匹の間で争いになるのは目に見えていた。 革ジャンの懐に隠し持った生肉がどっしりと重みを増してき…

「年末雷雨」

ワシャ長げえこと生きてきて、 こげなこた初めてだ、 クリスマスの翌日にカミナリとはのお。 雨は夜更け過ぎに雪へと変わるものだと 先代からさんざん聞かされていたが、 それがカミナリに換わるとはのお。 ホレ犬も怯えとる。 一緒に寝たいか? .

「竹垣の上で」

安土桃山時代風の女が揺れていた。 .

「穴」

大きな穴が掘られている。家の前で。(倒置法) ところで、掘られた穴の大きさに比べて どうみても外に出された土の量の方が多く見える。 掘る前の土と、掘り出された土とでは、その密度が違うから当然だ。 でも、どうしても納得できないほどの量なので どこ…

「ヒグマ」

「軍曹!軍曹じゃありませんか!」 私の声に、米陸軍第18歩兵部隊軍曹ロバート・J・スタニスラフは ぎくっとしたような表情で立ち止まった。 本人は変装しているつもりらしいが 羽織袴に革靴では、かえって目立つばかりだった。 「俺はもう退役したんだ」 軍…

「ぶべし」

マーベラー岸にとって 毎朝のゴミ出しは、儀式だ。 きのう一日を生きた証を、袋につめて清算するのだ。 今朝のゴミは、脱脂綿と犬の毛。 そのゴミ袋を開ける人のために、 マーベラー岸はメッセージを同封するのを欠かさない。 幾重にも折った紙片に、彼は今…

「ヘルメットから」

毛 .

「犬と戦った」

犬は、ドアの隙間に足をこじ入れるという押し売りのテクニックで強引に家に入ろうとしている。玄関のホウキという古典的な武器で対抗したが、いとも簡単に咬み砕かれて侵入を許してしまった。これはやばいぞ。例のスイッチを入れるしかない。カチッ 肉弾戦に…

「川」

三本の川を渡って故人に挨拶を。 馴染みのない川を渡るごとに、自分の所在無さが浮き彫りに。 途中、道に迷って帝釈天に出会った。 「お前の行くべきはこっちじゃない」 そう言われて上りホームへ引き返す。 挨拶を済ませたあと、 自分は帰りたいのか帰りた…

「今日のマイルール」

「落ち葉を踏みながらのチャリンコ走行」 俺が認めた落ち葉だけををタイヤで射止めながら 乾いた音の点を結ぶルートでGO HOME。 名付けて「ハッパフミフミ走法」 プラタナスは楽だけど、ケヤキには手を焼いた。 .

「猛抗議」

明らかにデザインをパクられた。 私は事務局に押しかけ、猛抗議した。 しばらく押し問答を繰り返していたが、 そうしている内に、ふいに、 実はそのデザインが自分でもパクっていた物だったことを思い出し、 素早く引き上げた。 .

「有楽町で」

背後から、おばちゃんに 「あんた、パンツが裏返しよ」 と言われた。 .

「どぜう」

ドジョウ鍋を食べた。 しかしどうしても箸でドジョウをつかめない。 何匹も床に落としてしまった。 やっと掴んだドジョウはまだ冷たく、喉の奥で踊った。 昨日のおでんも冷たかった。 このところ電子レンジの出力が落ちている。 .

「ピンクの船」

ピンク一色に塗られた船で島へ渡った。 船頭は自慢気に船底の窓を開けてみせた。 船底窓に貼られたアクリル板も透明ピンクだったので 海の中もピンク一色だった。 手が届きそうなピンクの海底で、 誰かが落としたコンビニのおにぎりがピンキーに漂っていた。…

「焼鳥屋の十戒」

焼鳥屋の常吉は、熱心な信者だった。 より多くの人においしい焼き鳥を食べさせるため、 店を妹夫婦に任せて、毎日屋台カーを運転した。 ある日の、渋滞した高速道路。 進まない車列にイライラを募らせ、心が狭くなっていた常吉。 中央車線でハンドルを叩きな…

「頼もしいアンテナ」

「早くここを出よう、長居は無用じゃ」 友人にせかされて、病院を後にした。 来た道を戻ろうとしたが、迷ったせいで方向がサッパリ分からない。 夕暮れの街の中を、やみくもに車を走らせ何度も角を曲がっていると、 ふいに白い光に満ちたコンビニが現れた。 …

「分岐点」

手元にある一冊のノート。 「分岐点」と題されたその文章の書き手は、確かに自分自身だと感じる。 だが一方で全く知らない人の物語を読むようでもあった。 それは、およそけったいな内容のせいだ。 14才までに何度か出会ってきたた大きな「分かれ道」。 そこ…

「字面」

「看護婦さん、地図は?この辺の地図はありませんか?」 「地図は無いが、地図の載ってる文集なら売っとるでの」 仕方なく売店でその文集を買い求めた。 それはどこかの中学校の卒業文集で、表紙には「珍竹林」とある。 生徒それぞれの手書き原稿を複写製本…

「中一時代」

病室に行ってみると、中学生のオチャが「中一時代」の付録を組み立てていた。 改めて今見ると、すごいタイトルだ。 オチャはきょとんとして我々を見ている。 困った。困ったときはコンビニだ。 「看護婦さん!近くにコンビニありませんか!」 「昆布煮? な…

「待合室」

中学時代の同級生、オチャを見舞いに、旧友二人と連れ立って山陰の病院を訪ねる。途中、迷いながら行ったので、まる一日かかってしまった。 そこはえらく古びた病院だった。待合室の真ん中にはダルマストーブが置いてあって、それを取り囲むように診察待ちの…

「屋根上の神経衰弱」

瓦葺きの屋根の上。二人の猫耳男が、落ち合っていた。 二人は学生時代を共にした仲だったが その後別々の道を歩み、 別々の会社に就職してそれぞれ部長になった。 ふだんは連絡すら取らないくせに、 年に一度、三日月の出るこの時期になると、 こうして屋根…

「取引先の部長が」

猫耳だった。 .

「矢印ー2」

見るからに几帳面そうな男だった。 問診を終え、試しに「あっち向いてホイ」をやってみると、面白いように引っかかる。重傷だ。実はこの手の患者は何度か診たことがある。簡単なチューンナップで効果を上げることが出来るはずだ。 網膜上に「矢印」を認識し…

「矢印」

几帳面な人達にとって、「矢印」というのは抗いがたい拘束力を持つものらしい。 パスネットのカードには、「←IN」と印刷されているが、実は反対側から入れても何も問題はない。ところが彼等は分かっていても、どうしても矢印の方から改札機に入れないと気が…

「巻き尺」

几帳面な人にとって、「より正確に計りたい」という欲求は御しがたいものがある。 今回の依頼は、巻き尺のチューンナップだ。 依頼人の希望は、メジャーを手で持つとその体温で金尺部分がわずかだが伸縮してしまうので何とかしてほしい、というものだった。 …

「焼きゴテ」

カマボコ職人のマイコーが、カマボコを持ってきてくれた。 マイコーの作るカマボコは最高としか言いようがない。 納得のいかないカマボコは全て海に帰しているという話から、その自信の程が伺えるが、そのせいで店先には多くてせいぜい10本くらいのカマボコ…

「対岸にて」

向こう岸に着いたらすっかり気分が悪くなったので 商売は若い衆にまかせてドロドロの湖岸で休んでいた。 しばらく美しくもない空など眺めていると 若い衆が泣きながら帰ってきた。 「社長、この土地の連中、西瓜ってモノを知らないみたいっす」 「んじゃ、ス…

「観光船」

古い観光地の湖。 湖というより池と言った方がぴったりくる大きさだ。 そこに浮かぶ観光船。 船というよりは塔に近かった。 円形の8階建てである。 私たちは、湖の向こう岸にスイカを売るために船に乗った。 エレベーターで最上階に上がると曇った窓から対岸…

「tuesday in the park」

ヒゲをそり落とした。 タバコを吸おうと思って公園に入ったら、 救世軍の食事配給の列に誘導されたから。 そこに並んでた人、みんな同じヒゲだった。 内からは「ウザ」と虐待され、 外からは「リリー・フランケンに似てるって云われません?」と おだてられ…

「のろい」

助手席の慎二は呪いにかかってしまい、奇声を発し始めた。 引けるだけあごを引き、白目をむいている。 車を止めていた場所からほど近い崖の上に人影が見える。 原因は奴だと直感した。なぜなら目があったとたんに身を隠したから。 しかし呪いは俺にも及び、…