几帳面な人にとって、「より正確に計りたい」という欲求は御しがたいものがある。
今回の依頼は、巻き尺のチューンナップだ。
依頼人の希望は、メジャーを手で持つとその体温で金尺部分がわずかだが伸縮してしまうので何とかしてほしい、というものだった。
そこでまず、円環状のフレームをつくり、そこからのテンションで巻き尺を中空に固定することにした。熱伝導を極力抑えるために、フレームはウミガメの甲良製、ワイヤーは処女の髪の毛を編み込んだものを使用した。問題はロック解除システムだった。巻き取り時に、金尺の暴れで処女の髪の毛を切ってしまうおそれがあった。悩んだあげく、目盛りの裏面に般若心経を印字することで、何とか暴れを鎮めることに成功した。
完成品を見た依頼人は、満足げに「やっぱレーザー測定器じゃこの味は出ないよね」と言った。
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