見るからに几帳面そうな男だった。
問診を終え、試しに「あっち向いてホイ」をやってみると、面白いように引っかかる。重傷だ。実はこの手の患者は何度か診たことがある。簡単なチューンナップで効果を上げることが出来るはずだ。
網膜上に「矢印」を認識したと同時にアプリケーションを起動させるスクリプトを追加する。使用したソフトはアトピー製の古いバージョンだがまだ使える。起動後は指定したアクションを自動実行するだけだ。まず画面のコントラストを上げ、矢印部分のみを選択ツールで選択、複製して新規レイヤーにペースト。矢印のベクトルと180度方向に反転。両矢印（⇔）になるように位置と大きさを調整したらコントラストを元に戻し、最後に画像を統合。
これだけのことで堅物の一方通行男があっちに行ったりこっちに行ったりの双方向男に変身できるのだ。
術語、試しに「あっち向いてホイ」をやってみると、男は不敵な笑みを浮かべて踊ってみせた。
.
