知人の個展のオープニングで訪れた画廊で
廊下に灰皿が置いてあったのを思い出し、部屋を出ると
隣が針灸院だった。
その入口脇の壁面に大きな日本地図が貼られている。
よく考えれば、その場所に何の必然性のない日本地図だが
見事にその空間にしっくりと調和していた。
というのも、タバコの煙越しの日本地図は
不思議なことに何の違和感もなく「人体」に見えたから。
地図に細かく書き込まれた地名や河の流れは、
まるで人のからだに隠された何かのツボの所在を示しているようだ。
ものの形には、拡張性を持つハリのある形と、犯され浸食されていく形があるように思うが、今、目の前にある地図の海岸線に囲われた形は、悲しい程に間違いなく後者だ。
まさに痩せさらばえて衰退して行く身体そのものに見える。
鍼灸院の入口に貼られた日本地図。
打ち込まれる針を待っている瀕死のシルエット。