dobochon’s diary

宮原清の夢日記

「湿度」

dobochon2007-04-11

余市の興味は「湿気」である。

湿気の実体とは、どんな形をしていて、その密度は果たして捕まえることのできるボリュームなのか。

余市は、風呂場の中で大量の湯気を産む為に失神寸前になるまで湯船に居座り、
その蒸気を部屋に解放するのが好きだった。
フラフラになりながら風呂場の扉を開けると、
白く細かい粒状の湯気は見る見る内に乾いた居間へ吸い込まれ、たちまちの内に部屋のガラス窓を曇らせた。
しかし風呂場の湿度と居間の湿度が同じになったとたん、湯気は姿を消してしまうのだった。
彼の愛した湿気はガラス窓の落書きの痕にわずかにその痕跡を残すのみ。
それでも部屋に充満した湿り気は、しばらくの間、風呂あがりの余市を優しく包んでくれるだろう。

湿った所と乾いた所の狭間とは一体どんな様相なのかと思う。
境界があるのだろうか?
乾いた世界を地にして湿気たボリュームが漂っているのか、
それとも湿めった世界の中に乾いたボリュームが図として在るのか。
余市の悩みは尽きない。

間もなく梅雨を迎えるにあたり、今度は乾きを欲する自分がいる。
毎年の事ながら、心の準備に余念のない余市であった。