dobochon’s diary

宮原清の夢日記

「虎河豚日報」5

異常なまでの描き込みの積み重ねによって鍛えられた
ズミ村の握力は凄まじかった。


アタシの手首を掴んだまま、ズミ村はねっとりと
「この絵を明日までにもう一度描き直すやり方があるっていうんだったら、
是非聞かせてほしいね」
と言って、描き終えたばかりの原画を
もう片方のアタシの手に押しつけた。


はぁ〜メンドくさい。
で、アタシはその絵をちらっと見て言ってやったの。


「いい? そもそもアンタ達の描き方はまったくムダだらけなのよ。大体この記事の内容からして問題になってる箇所はパンタグラフから屋根構の送電管にかけてでしょ? なのに連結器や台枠描くのに夢中になって何時間もかかってちゃ、しょうがないってことくらいわからないわけ? そういうところは「影」として扱ってやればいいのよ。わかる?わからない?駄目ね。「影」っていっても黒で塗りつぶしゃいいってもんじゃないのよ!影の中にも全体のバルールから導き出される色味ってものがあんの。つまりあんた達には「光と影」って認識が欠如してんのよ。印象派って聞いたことくらいあるでしょ? とにかくその方がメリハリもつきやすいし、なんてったってオシャレだと思わない?  そういうとこがわかんないから読者がどんどん離れていっちゃうんじゃあないの? なによその顔。何も言い返せないくせに。ホントしょうもない。ちょっとその筆を貸してみなさいよ、やだキタない筆ね。アンタちょっとそこどいて。いい?例えばこ〜んな感じで・・ホラ、こうしてやるだけでグッと絵が締まるでしょ。ここんとこも・・・あら?何よこれ、ドクサ系のブレーキは真空ブレーキだったはずよ。どう見たってこれ自動空気ブレーキじゃない!そういえば先週号のブレーキ制動時の滑走再粘着の説明記事の挿入画も、電流リプルと速度センサレスベクトル制御の図版が逆だったわよ。メンドくさいから黙って直しといてあ・げ・た・け・ど!!」


ふと気がつくといつのまにかアタシの周りに人だかりが出来てた。
画工班のみならず、他の班の連中をはじめ、ギト次やズバ子まで集まっていた。


アタシが画工班に配置換えされたのは
それから一週間後のことだった。



おわり

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