客をもてなすために
ありったけの明かりを灯してみる。
といっても、この部屋にある光源といえば
ガラス棚に仕込まれた細い蛍光管とか、
冷蔵庫の内照だとか、
アンプのインジケーターだとか、
シガレットライターに埋まっている小さな光とか
充電器の赤いランプとか
携帯の液晶画面とか
ロボットの奥で瞬いているリレーの明かりだとか、
そんなところだ。
この小さな光たちは部屋のあちこちで
めいめいに言葉少なく明滅しているだけなので
とても部屋全体を照らすことはできないが
それ以上に奥行きのある空間を作ってみせるのだ。
唯一、錆びた20ワットのクリップライトだけが、
かろうじてまともな照明器具だけど
そいつは去年から球が切れている。
でも今日の客はきっとこの照明計画を喜んでくれるはずだ。