dobochon’s diary

宮原清の夢日記

「ノスタルジア卵」



「ひとつも崩さずに届けてくれ」
そう言われて渡された大皿には、
ゆるい仕上がりの卵焼きが山盛りだった。


撮影セットの裏手にある細い通路を、
慌ただしく動き回るスタッフとすれ違いつつ
卵焼きを運ぶ。


Cスタジオのバックヤードで角を曲がろうとして、
立て込みの壁に肩が触れてしまった。
垂木のトンボだけで立っていた巨大な壁は
ゆっくりと傾き、隣の壁を数枚巻き込んで
明るいセットの中へ静かに倒れていった。
大量の空気を吐き出しながら。


収録中のスタジオは騒然となっている。
ハレーション気味でよく見えないが、
倒れた壁の下で何か嫌な音もしている。
幸い誰にも見られてていなかったので、そのままバッくれることにした。
卵焼きの方はというと、
盛りつけの見てくれが多少悪くなったものの何とか無事だった。
Eスタジオに笑顔で大皿を届け、
そそくさと建物の外に出た。
外は雨だった。


わずかな軒下の湿った壁に背をあずけ、
「ビッグ・マルボーロ」で一服。
雨の飛沫でタバコが濡れてしまい、なかなか火が着かない。


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