dobochon’s diary

宮原清の夢日記

「香水川」 Perfume river .



冬の夜中に野火止用水を渡るとき
香水の香りがすることがある。


たとえば半開きの瞼の隙間から
オリオン座を見上げて歩く帰り道。


外気より水の方が温いので
用水の水面からは湯気が立ちのぼっている。
橋を渡った途端、
ふいにムスクのような甘く淫美な香りに包まれて
思わず立ち止まってしまう。


かつてはドブ川だった用水路からそんな匂いがするはずも無く
何かの勘違いかと思って何度も橋を行ったり来たりしてみても
香りは間違いなく橋の下から漂ってくる。
冷水に浸った土と植物の根の成分が、
気温との関係で何か反応を起こしているのだろうか。


香水の原料はむしろ臭いと聞いたことがある。
もしかするとドブ川の時代を何年も経たからこそ
今やっとこんな匂いを発しているのかもしれないとも思う。


先日、キューブリックの「フルメタルジャケット」を観たら
劇中に「香水川」という川が出て来た。
調べてみたらヴェトナムのフエに実在する川で
花の香りがすることからその名が付いたそうだ。


野火止用水は自分にとっての「香水川」だ。


.