お化粧研究会でのグループ対立は激化する一方だった。
一方のグループは、匂い立つような色香を放つ女、月子の率いるメファンタスティック・ファイヴモ。片や腹が減っては地塗りができぬという怒濤の女、松子を中心としたメナチュラル・ハイモ。
彼女達の対立の原因とは何か。それはお化粧に対する考え方の違いに他ならない。二つのグループに属する女の顔を見比べれば一目瞭然なのだが、ファンタスティック・ファイブの目指す化粧とは、一言で言えば「幻惑のさすらい人」。対するナチュラル・ハイは「収穫前の爆弾低気圧」といったところだろう。それぞれの目指す究極の、尚かつ至高の女像をめぐって、さまざまなお化粧法が編み出され、研究され、それぞれの化粧観はもはや宗教的な域にまで達しているといってよかった。
そんな研究会の事務局を任されている私のところへ、月子と松子が揃って怒鳴り込んできたのが昨日の事である。
これまたいつものように面倒なことに巻き込まれそうだ。