その昇降ボタンを押すのは一週間振りだった。
遠出から戻った車を地下の車庫に入れるためだ。
それにしてもこの世に
立体駐車場でパレットが上がって来るのを待つ数分ほど
退屈な時間が他にあるだろうか。
チェーンが巻き上がる音にあわせて数を数えてみたり
隣に広がるハーブの茂みを飛び交う蜂の動きを追ってみたり、
その遥か先を流れる雲の輝きに目を細めたりしているうちに
やっとのことでパレットは地下2階からせり上がってきた。
どのくらいの時間そこに居たのか知らん、
一匹の蜥蜴がそこに乗っている。
背中から尾にかけて、とんでもない青を光らせながら
奈落の底から地上に上がって来たのだ。
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