dobochon’s diary

宮原清の夢日記

「cross」


「何のポーズだと思う?」


途中で拾った棒きれを片手にかざし、女は砂浜にひざまずいてみせた。
溶かした鉛を思わせる静かな海面に、
雲間からやっと出てきた柔らかな春の陽差しが、まるで銀箔のように貼り付いている。
その小さな浜辺には、俺達を除けば杖をついた老婆と彼女の犬しかいない。


「受胎告知。」
正解だったらしい答えに目を丸くしている女を見ながら、
俺は潮風で崩れかけたコンクリートの階段に腰をかけた。


「何でわかったの?」
「わかるさ」


そう答えながら何気なく、
足元の砂から頭を出している赤く錆びた金属片をつまみ上げてみて‥‥驚いた。
それはこの浜に流れ着いた留め金の一部か何かに違いないけれど、
見事なまでに十字架の形をしていたのだ。