dobochon’s diary

宮原清の夢日記

ローマ王の一点透視

ローマの王のような人が大きな建物の前で聴衆を前に演説している。かつての王の玉座があったという場所を指差し、功績を讃えていた。私はその場所に行って見た。王が立っている場所とそことは、もう少しのところでで街並みとの一点透視ラインが噛み合わず、10mほど横に移動するとピタリとシンクロした。私はその場所から王に、「王よ、貴方は間違っている。一点透視図法によれば、本当の玉座の場所はここだ!」と叫んだ。すると王は、おお、私としたことが…と肩を落としていた。
大勢の人々の前で王の間違いを正すことができ、私は非常にいい気分だった。

「指ガエル」

 

手続きを何とか終えて建物を出た時には辺りは暗くなり始めていた。すっかり疲れていたし、小雨も降り始めたので、街道に出てタクシーを拾うことにした。 

この辺りからなら、上手くいけばワンメーターで帰れる。最初に来た車を停めて乗り込み、いつも伝えるように行先を告げると、どこかで見た漫才師のような風貌の運転手は「はい〜」と云いながら軽やかにハンドルを回した。私は座席に深く座り直して一息ついた。

濡れた傘をたたみ終えて目を上げると、薄暗い助手席のあたりで人の頭が揺れていることに気がついた。助手席の裏にもう一つ狭い座席があり、そこに挟まれるように男が座っているようだった。男の下半身は、江戸川乱歩人間椅子のように助手席のシート内に納まっているのだろうか、シートとほとんど一体化していて、そのイガグリ頭が、
まるで助手席のヘッドレストの様に見えていたので今まで気付かなかったのだ。

これは相乗りタクシーだったのだろうか?
よくよく車内を見回してみると、ガムテープで補修されていたり、缶スプレーで適当に塗装された場所があったりで、何やら怪しげな雰囲気だ。運転手が何かを口にしたが、それは私にではなく、助手席の男に対してで、そのやりとりから、二人は他人ではないことが分かった。ますます変だと感じて窓の外に目を向けると、車は見慣れない風景を走っていた。私は急に不安になり「ここは行先と違う。降ろしてくれ」と云った。しばらく押し問答をした後、車は左に寄せることもなく車線の真ん中にゆっくりと停車した。

自分でドアを開けて外に出ると、運転手も降りてきた。
「ここは何処か?」と聞くと「そんなに遠くないよ」と適当な答えが。

早いとこ切り上げた方が賢明だと思い、料金を聞くと運転手は両手の指を使ってカエルの顔を作ってみせた。「ワンメーター」が頭にあった私は「それは600円という意味か?」と聞くと、運転手はカエルの口をパクパクさせながらニタリと笑い「680円でどう?」と答えた。

「それに葡萄味のグミを付けてな」とも云った。

私は1000円札を差し出したが、それは端っこがボロボロで傷んでいた。それを見た運転手が「キレイなのじゃないとイヤだ」と云うので財布の中を探すが、何故かハサミで切られた札しか入っていなかったので、仕方なく1万円札で払い、釣銭を受け取った。

そうこうしている内に、道を塞がれて前に進めなくなった後続の車たちがしびれを切らしてクラクションを鳴らしはじめた。
その先頭にいたのが、これもまたタクシーで、運良く空車だったので、そのまま駆け寄りウインドウをたたくと、白手袋の運転手がドアを開けてくれたので、すぐさま飛び乗った。

私は、ホッとしながら運転手にこれまでの事情を説明した。
運転手は「それは難儀でしたな」という表情を浮かべながら
「この車には認可ナンバーを読み取る装置が付いてるので、ナンバーをスキャンしてみましょう」と云い、前の車を追うように走り出した。私はすっかり安心した。
改めて前の車を後方から観察してみると、屋根には黄色い回転灯が付いていて、足回りもオフロード仕様のようだ。今更だが、何でこんな車に乗ってしまったのだろう。
暫くすると、運転手が「今、スキャニングした結果を本部に問い合わせています」と云った。
結構な時間がかかっているのは、高度な通信内容の為なのだろう、と思った。
しかしふと気がつくと、運転席は左側に座っている。なんと左ハンドルではないか。
再び頭をもたげる不安な気持ちをやっと抑えながら、私は恐る恐る聞いてみた。
「左ハンドルのタクシーは珍しいね」と。

おわり。