dobochon’s diary

宮原清の夢日記

「恥毛」 Bush

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 ここに住み始めた頃、周りは堂々とした雑木林で覆われていた。
夏、樹下は静謐ながら秘密めいた妖しく濃密な香りに満ちていたし、冬枯れの枝越しに見える青空には、何かを見透かされているような透明感があって、そこには近づきがたい威厳のようなものを感じずにはいられなかった。
 だから我々はそんな場所に恐る恐る近づいて木々の顔色を伺いながら許された周辺に僅かな土地を間借りして住まわせて貰っている、そんな雰囲気がこの土地にはあった。

 しかし雑木林は次第に宅地化されていった。年々削り取られるように整地され、あっという間にインスタントな家が建ち並ぶ。いつの間にかあたりは住宅だらけになって林はほんの一握りとなった。関係が逆転したのだ。
 自分もその流れに加担するように此処に引っ越してきたのだから文句を言える筋合いではないが、あれだけ堂々としていた緑が今や行政の保護対象となってかろうじて生き延びているのを見る度に正直やるせない気持ちになる。

 残った小さな茂みを見る度に自分は何故か「恥毛」という言葉を連想するのだった。最後の砦だ。