集まる牛乳の数は人気のバロメーターなんですよ、
と教師は言った。
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足裏に
強力な磁石を仕込むアイデアに捉えられて一晩。
明け方になって
浮くことはできないという結論に。
ここに住み始めた頃、周りは堂々とした雑木林で覆われていた。
夏、樹下は静謐ながら秘密めいた妖しく濃密な香りに満ちていたし、冬枯れの枝越しに見える青空には、何かを見透かされているような透明感があって、そこには近づきがたい威厳のようなものを感じずにはいられなかった。
だから我々はそんな場所に恐る恐る近づいて木々の顔色を伺いながら許された周辺に僅かな土地を間借りして住まわせて貰っている、そんな雰囲気がこの土地にはあった。
しかし雑木林は次第に宅地化されていった。年々削り取られるように整地され、あっという間にインスタントな家が建ち並ぶ。いつの間にかあたりは住宅だらけになって林はほんの一握りとなった。関係が逆転したのだ。
自分もその流れに加担するように此処に引っ越してきたのだから文句を言える筋合いではないが、あれだけ堂々としていた緑が今や行政の保護対象となってかろうじて生き延びているのを見る度に正直やるせない気持ちになる。
残った小さな茂みを見る度に自分は何故か「恥毛」という言葉を連想するのだった。最後の砦だ。
クイズの答えは
「思春期塗装社会啓蒙大全」だと解っていたが、
フリップに書く漢字がどうしても出てこない。
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「金星はどれ?」
と、彼女は言った。
自分は、握った手の温もりが気になって、それどころではなかった。
「あれはドローンだよ」と答えた。
早く戻らないと、日が暮れてしまう。
しかし今、乗っているのは雑巾だ。
踏切でレールのミゾを越す度に
形が崩れるので、思ったように進まない。
不味いが美味い。